2008年度研究活動一覧」刊行に際して

 

 平成16年度の法人化の際、21年度までの6年間の中期目標・中期計画が立てられたが、今年度はその中期目標期間中の実績評価があった。大学は、過去4年間について大学全体に関する資料「中期目標の達成状況報告書」、及び各部局の「現況調査表」を作成し、昨年の6月に文部科学省に提出した。それらの研究部分については、大学評価委員会から依頼を受けた大学評価・学位授与機構が評価をし、その結果を213月に発表した。

 福井大学全体の研究に関する評価は予想以上に高く、5段階評価で、東京大学や東京工業大学と同じく、W(良好である)という評価であった。今のところ、X(非常に優れている)という評価を受けた大学があるという報告はなく、V(おおむね良好である)という評価の大学が多い。

一方、現況調査票に対する評価は4段階評価で行われ、工学・工学研究科に対する評価は2(期待される水準にある)であった。ちなみに3、4はそれぞれ(期待される水準を上回る)、(期待される水準を大きく上回る)という評価であるが、他大学の工学部・工学研究科の評価結果に関する情報は今のところない。

数字だけを見ると、大学全体の評価Wと工学部・工学研究科の評価2には大きな差があるように見えるが、必ずしもそうではない。数字の意味に注意すると、前者のWは「良好である」に対し、Vは「おおむね良好である」、Uは「不十分である」という評価である。ところが、後者の評価では、2が「期待される水準にある」であるから、その意味はVの「おおむね良好である」よりも、W(良好である)に近いとも言える。

また、大学全体の「中期目標の達成状況報告書」には、各学部・センターの代表的な「研究業績」と特徴的な「研究実施体制の整備」が掲載されているのに対し、現況調査表には、工学部・工学研究科における研究活動の全体が記載されている。従って、前者の評価Wは、東大や東工大における研究の総合力と福井大学の研究の総合力が比較された訳ではなく、代表的な業績・体制については、福井大学にも東大や東工大と遜色がないものがあるという評価であるのかも知れない。

何れにしろ、工学部・工学研究科にもレベルの高い研究業績があることには間違いない。また、別の観点からの評価である法人化後の研究環境整備の「質の向上度」についても、「大きく改善、向上している 又は高い質(水準)を維持している」という3段階評価で最高の評価を得たことは、今後の成果に期待をしても良いのではないだろうか。

 研究評価、特にその質についての評価には、色々な議論がある。大学評価・学位授与機構の評価も一つの側面からの評価であり、工学部・工学研究科の実績には今回の評価方法に馴染まないものもあった。我々は色々な評価結果に一喜一憂するのではなく、将来の研究に向けて、そこから何が学べるかを謙虚に考えることの方が重要であろう。

                   

福井大学工学研究科長 鈴 木 敏 男