2013年度研究活動一覧」 発刊に際して

 

                         工学研究科長 小野田信春

 

「工学部・工学研究科に関わる研究活動一覧」は、1990年度に発刊が始まり、2007年度からは電子ファイルとして、工学研究科のホームページに搭載している。

大学の中心的使命は教育と研究であるが、第一義的には大学は教育機関であると私は考えている。しかし、大学での教育は研究に裏打ちされていることが前提であり、研究抜きで真の教育、生きた教育はあり得ない。その意味で大学機能の根底にあるのは研究であり、研究水準を量的・質的に高めることが、工学研究科の将来に向けて極めて重要であることは言うまでもない。

一方、国立大学を巡る動きが、最近とみに激しくなってきている。政府・文部科学省は、20135月に「今後の国立大学の機能強化に向けての考え方」を出し、また、11月には「国立大学改革プラン」を公表するなど、国立大学改革の方向性を矢継ぎ打ち出している。20134月から第2期中期目標期間の後半3年間に入っているが、国立大学改革プランでは、この3年間を国立大学の「改革加速期間」として設定し、ミッション再定義で明らかになった強みや特色を踏まえ、さらなる機能強化に取り組むことを各大学に対して求めている。

ミッション再定義は、研究、教育、社会貢献について、客観的データに基づき各大学の力を判断するという性格のものであったが、福井大学工学研究科に関しては、特に研究面に於いて、強み・特色を明確にできるとともに、課題も見えてくる契機になった。研究について最も大切なのは、教員個々の研究の自由を保障することであり、そのこと自体は大学がどのような状態に置かれても不変である。これまではその原則のもと、研究について特に重点分野を決めるというようなことをせず、個々の教員の研究成果の総和に期待するという考え方をとってきた。しかし、上述のように各大学は「尖った」部分をもつことも求められており、ミッション再定義を通じて明確となった強み・特色に基づき、研究について今後重点化する分野として、繊維・機能性材料工学、原子力・エネルギー安全工学、安全安心の設計工学、遠赤外開発領域、窒化物半導体の5つを設定することにした。もちろん、工学研究科の研究領域はこの5分野に限るわけではない。福井大学工学研究科は、工学のほぼ全ての分野をカバーしており、5分野の周辺も含め、広範囲に渡る研究が行われている。教員個々の研究を保障しつつ、設定した5分野を中心に、強みや特色を創出する体制をいかにして構築するかに向けて検討を開始しているが、それが実を結び、工学研究科のさらなる発展に結びつくことを期待したい。

研究活動は、質と量の両面について判断すべきであるが、質の評価は客観性のある指標がなく、現実には難しい。この「研究活動一覧」は工学研究科の研究を量的側面から図る資料である。もちろん、量も研究活動の大切な指標であり、このような資料を20年以上に渡って発刊し続けていることは貴重な財産である。「2013年度研究活動一覧」が、今年度の研究活動を振り返ることで、われわれ自身の自己点検に資するだけではなく、多方面からの助言・提言にもつながる資料として活用されることを願っている。

この研究活動一覧は、堀邊稔委員長をはじめとする編集委員各位の尽力によるものである。この場を借りて感謝申し上げたい。