2014年度研究活動一覧」 発刊に際して

 

                         工学研究科長 小野田信春

 

「工学部・工学研究科研究活動一覧」は、1990年度に発刊が始まり、2007年度からは電子ファイルとして、工学研究科のホームページに掲載している。今年は初刊から数えて25年の節目を迎えることになる。四半世紀に渡ってこのような資料を発刊し続けてきたことは貴重な財産であり、記念すべき第25号をここに刊行できることを非常にうれしく思う。

今年は、第2期中期目標・中期計画期間6年の5年目に当たる。残り1年となり、福井大学においても、今期の評価とともに、第3期の目標策定に向けての検討が開始している。中期目標・中期計画期間における評価は、教育、研究、社会貢献等について行われるが、第1期で得た好評価に比べて、第2期の福井大学の総合的な評価は低下するだろうというのが大方の予想である。もちろん、そのような結果に一喜一憂したり振り回されたりする必要はないが、一方では、国立大学がこのような仕組みの中に置かれているという状況は理解しておく必要がある。大学が果たす役割の中で、研究の重要性は論を俟たない。教育はもちろん、産学連携をはじめとする社会貢献・地域貢献も研究がベースとなる。評価のようなことを離れたとしても、工学部・工学研究科の研究を質と量の両面で高めておくことは、福井大学の存立意義からしても極めて大切である。2016年からの第3期中期目標・中期計画期間には、国立大学を機能別に「世界最高水準の教育研究拠点型」「特定分野重点支援拠点型」「地域活性化・特定分野重点支援拠点型」の3類型に分けて、各国立大学はいずれかの類型を選択するということが検討されているようである。実際にそうなるのか、現時点では不明であるが、仮に福井大学が「地域活性化・特定分野重点支援拠点型」になったとしても、研究の重要性が下がるということには直結しないし、またそうさせてはならない。

ただ、研究を活性化させるには、掛け声だけではだめで、それを裏付ける研究予算と研究時間の確保が必要である。予算面については、国立大学の運営費交付金が年々減っている中、最大限の努力をして、工学研究科では他大学に比べて遜色のない、あるいはそれ以上の研究費を配分してきた。もちろん、それでも十分でなく、外部資金に頼らざるを得ないというのも事実である。時間の方はもっと深刻で、教員の多忙化が進み、研究に時間が取れない、何とかしてほしいという切実な声をよく耳にする。特に、今年は2016年に向けての工学部改組の検討に多大の時間を費やし、それが研究活動に及ぼしたかもしれない影響を懸念している。幸い、本活動一覧を見る限り、少なくとも量的な面においては例年と同様の成果が得られたようで安心しているが、教員の多忙化を少しでも軽減する方策を考えることは、研究の活性化に向けて必須である。ただ、これは工学部・工学研究科の運営や意思決定のシステムにも関わることであり、難しい面もあるが、知恵を出し合って解決策を探りたいと考えている。研究についてもうひとつ大事なのは、工学研究科全体としての研究戦略である。これについては、ミッション再定義に基づいて設定した重点5分野の推進が喫緊の課題であるが、一部はまだ体制作りが十分ではなく、早急に整備して動き出す必要がある。

研究活動を質と量の両面で見た場合、この「研究活動一覧」は工学研究科の研究を量的側面から図る資料である。「2014年度研究活動一覧」が、今年度の研究活動を振り返ることで、われわれ自身の自己点検に資するだけではなく、多方面からの助言・提言にもつながる資料として活用されることを願っている。

この研究活動一覧は、平田隆幸委員長をはじめとする編集委員各位の尽力によるものである。この場を借りて感謝申し上げたい。