2015年度研究活動一覧」 発刊に際して

 

                         工学研究科長 小野田信春

 

今年度で第2期中期目標期間は終了し、4月から第3期中期目標期間が始まる。周知のとおり、文部科学省は第3期中期目標期間において、強み・特色を最大限に生かした、さらなる改革・改善と発展を各大学に求めるとともに、3つの重点支援枠を設定した。3つの重点支援枠とは、

@主として、人材育成や地域課題を解決する取組などを通じて地域に貢献する取組とともに、専門分野の特性に配慮しつつ、強み・特色のある分野で世界ないし全国的な教育研究を推進する取組

A主として、専門分野の特性に配慮しつつ、強み・特色のある分野で地域というより世界ないし全国的な教育研究を推進する取組

B主として、卓越した成果を創出している海外大学と伍して、全学的に世界で卓越した教育研究、社会実装を推進する取組

である。福井大学は重点支援@を選択した上で「第3期中期目標期間における重点的取組」として、3つの戦略と9つの取組を制定し、さらに第3期中期目標・中期計画も作成した。

重点支援@の枠組みは地域貢献を第一義的にしているが、もちろんそれに特化するわけではない。そもそも、教育はもとより、社会貢献や地域貢献も研究に裏打ちされて始めて意味を持ち生きたものとなる。重点支援@を選んだからといって、研究の重要性はいささかも揺るがない。実際、福井大学の制定した戦略の2番目は研究に関するものであり、それに対応して第3期中期目標にも研究に関する目標が、数値目標的なものも含めて具体的に掲げてある。工学研究科に係るものとしては、遠赤外領域開発・応用研究、原子力安全・危機管理研究の特化した目標に加えて、「工学分野の研究を強化し、工学研究科が推奨指定している質の高い学術雑誌への論文掲載数を第2期より増加。特に繊維・機能性材料分野では20%以上増加」が挙げられている。これらはいずれも公約的なもので、目標達成に向けて努力する必要があるが、大学機能としての研究の重要性を考えれば、いずれも妥当なものであると思う。国立大学を巡る状況は厳しくなる一方で、教員の多忙化や研究費の減少等、研究の活性化を阻害する要因が大きくなってきていることも事実であるが、これからの工学研究科のためにも、研究の質を落としてはならないし、また工学研究科にはその力があると確信している。

「工学部・工学研究科研究活動一覧」は、1990年度に発刊が始まり、2007年度からは電子ファイルとして、工学研究科のホームページに掲載している。研究活動を質と量の両面で見た場合、この「研究活動一覧」は工学研究科の研究を量的側面から図る資料である。4半世紀を超えてこのような資料が刊行され続けてきたことは、貴重な財産であり、今後も継続させる必要がある。この「2015年度研究活動一覧」が、研究活動の振り返りを通して我々自身の自己点検に資するだけではなく、多方面からの助言・提言にもつながる資料として活用されることを願っている。

研究活動一覧が今年度も無事に刊行できたのは、編集委員諸氏の尽力によるところが大きい。この場を借りて感謝申し上げたい。