2016年度研究活動一覧」 発刊に際して

 

                         工学研究科長 小野田信春

 

研究活動一覧は、これまで収録期間を暦年(1月から12月)で行ってきたが、今回から年度(4月から3月)に変更することになった。それに伴って、発刊時期も少し遅くなる。ただし、この2016年度版については、収録期間の切り替えを調整するために、201611日から2017331日までの研究業績が掲載されている。

2期中期目標期間が終了し、20164月から第3期中期目標期間が開始した。同時に、福井大学においては、新学部が設置されて4学部体制になるとともに、工学部も学科再編を中心とする学部改組が行われた。いろんな意味で2016年は改革の始まった年であったと言える。工学部改組の主目的は、特定の専門分野についての深い知識に加え、その周辺も含めた幅広い分野に関する総合的な知識を持った技術者を育成する体制を整えることである。いま社会は急激な速度で動いており、それが工学を取り巻く様相にも大きな影響を及ぼしている。工学部改組はそのような社会の変化に対応するためのものであったが、逆に、この急激な時代変革は、AIをはじめとする工学の進展に依る部分も大きいということを忘れてはならない。工学は人間社会に直接的に寄与する。その意味において、工学に関わる研究には社会から大きな期待がかけられており、われわれは、常にそのことを意識する必要がある。

ただ、私自身のことも含めて本音的に言うと、そういう意識はもちろん大切であるが、人間社会への貢献、ということは究極の目標として据えるにしても、まずは自分の興味あること、どうしても知りたいことを研究する、というのが通常ではないだろうか。面白いからやる、ということが基本で構わないと思う。とは言え、第3期中期目標期間に掲げた目標があり、それを達成させることは公約でもある。また、文部科学省は各大学に対して、それぞれの持つ強み・特色を生かして改革・改善することを引き続き強く求めている。大学予算の減少とそれに伴う人件費の抑制や研究費の減等、研究を取り巻く状況は厳しくなる一方であるが、工学部・工学研究科においても、既に定めた研究の重点5分野を実質化して成果に結びつけるとともに、この5分野に続く新たな強み・特色を創出する必要がある。これはぜひ成し遂げなければならないが、それと同時に、工学部・工学研究科が築いてきた各人が自由な発想で自由に研究できる環境だけは何があっても守り続けなければならない。この「2016年度研究活動一覧」も、構成員諸氏のそうした自由な研究活動の1年間(正確には冒頭に述べた理由で13カ月間)の集積である。

「工学部・工学研究科研究活動一覧」は、1990年度に発刊が始まり、2007年度からは電子ファイルとして、工学研究科のホームページに掲載している。研究活動を質と量の両面で見た場合、この「研究活動一覧」は工学研究科の研究を量的側面から図る資料である。4半世紀を超えてこのような資料が刊行され続けてきたことは、貴重な財産であり、今後も継続させる必要がある。この「2016年度研究活動一覧」が、研究活動の振り返りを通して我々自身の自己点検に資するだけではなく、多方面からの助言・提言にもつながる資料として活用されることを願っている。

研究活動一覧が今年度も無事に刊行できたのは、前田寧委員長をはじめとする編集委員諸氏の尽力によるところが大きい。この場を借りて感謝申し上げたい。