24年度 The teacher of the yearのことば

「今回の受賞は,ちょっと嬉しいかも」             — 物理工学科  高木 丈夫

例年,この作文には,少しばかり斜に構えた事を書くのだけれども,今回の受賞だけはチョットばかり 嬉しい.まさか,今年の3年生に優秀教員として選んでもらえるとは思っていなかったので....という のは,この学年の2年次後期必修授業を担当したのだけど,7 割の学生を不合格とした.そして,現在そ れらの学生達が再履修中なのである.必修科目で7割の不合格率というのは,一般的には高過ぎる不合格 率であり,教員側の問題が指摘されると思う.ところで,僕は試験に,「理解十分なら簡単に解けて,不 勉強の場合は,まったく解けない」問題を工夫して作成する.その結果として得点分布は,極端な二山分 布になる.だから,合否判定に関しては何も迷うことは無く,自信を持った成績評定である.実は昨日に, この科目の中間試験を行ったのだが,多くの再履修の3年生は昨年度とは見違えるような答案を書いてい た.学生が努力したうえでの不成績なら,授業と試験のあり方を検討すべきだけれど,努力しない不成績 学生を合格させるなら,学力不足のデフレスパイラルを加速するだけである.(何となく,近年そのよう な雰囲気を学内に感じて,ずいぶん不満ではある.)だから,彼らなりに,昨年度の不勉強を納得しての 対応であり,今回の優秀教員への投票なのだと思う.

 

本学に赴任しての最初の 10 年間,ちょうど 30 代の頃であるが,成績が下層の学生まで含めて,概念的 な把握を十分にさせるべく努力を続けた.しかし,下層部の学生の成績向上は,どうやら不可能らしいと 思えた.そんな折に,決定的なことを7年前に経験する.成績下位半分の学生だけに参加権利を与えて, 希望者に数学物理全般の補習授業を開講したのだが,参加者は見事にゼロ!誰も来ない教室で 90 分間(自 分の仕事をしながらであるが)学生を待ち続けたのである.さすがに参加者ゼロのまま,8回やってアホ らしくなった頃,成績上位の学生が何人かやってきて,「そんなやる気の無い学生を相手にしていないで, 僕等を授業に参加させてください.」との申し入れを受けた.成績が下位の学生は,授業では質問もし辛 いと思っての企画だったが,やはり知的な資質よりも,積極性や学問に対する興味自体の欠落がはるかに 大きいのである.成績上位者を受け入れた,その後の授業は 10 名を越える参加者を得て,通常授業では 話せなかった内容を含めて,お互いに楽しく講義を進めることができた.やはり,大学は「自ら助くる者 を助く」方針で行かないと,いけないのだと思う.

 

さて,それ以来,少しばかり授業方針を変更している.ごく当たり前に授業をしたならば,優秀教員を 受賞することは容易だと思う.でも,それでは面白くないし,僕の役割として,そのような授業をしては いけないと思う.それで,ワースト教員の称号があるなら,優秀教員と同時にその称号も受賞したい,と 考えるようになった.だから今は,学問的には学生に優しく,しかし毒をふんだんに散りばめた授業をし ている.受講態度が悪い学生や,最初から就学意欲が無い学生には,「進路を考え直したら?」というメ ッセージも送っている.そのような授業方針に変更して以来,物理工学科だけでなく,授業を持っている 他学科の掲示版でも僕の掲示物は,妨害を受ける事が多くなった.方針どおり,一部の学生には十二分に 嫌われているいるらしい.そんな中で2年続けて,この作文を書くことになり,同時受賞の目標は,ほぼ 達成されたかな?と想っている.

 

←1つ前のページに戻る

教育

工学部・工学研究科

優秀教員

GPプロジェクト