25年度 The teacher of the yearのことば

「日頃の教育に対する工夫、及び今後の教育への抱負」   — 電気・電子工学科 勝山 俊夫

今回優秀教員に選ばれ、日頃の教育に対する工夫,及び今後の教育への抱負を紹介する機会を与えられましたので、とくに授業の進め方に関して、担当授業の「電磁気学」を例に、最近心がけていることを書かせていただきます。

 

授業で一番に心がけていることは、学生の諸君に如何に考えさせるかということです。学生は時間が無いせいもあってか、公式を丸暗記して問題に当たることが多いようです。これでは、電磁気学の試験は合格するかもしれませんが、社会へ出てから本当に困難な難しい問題に直面したとき、対応するすべも無く、立ち往生することになってしまいます。このような状況に陥らないように、少しでも大学生のうちに、考える習慣を付けてもらうように授業でも気を付けています。

 

このため授業では、問題を解くときや法則を説明するとき、初めからその内容の説明を始めるのではなく、出来るだけ、問題の解答や法則を予測することから始め、法則の具体的な説明は最後にします。例えば、磁場に関する「アンペールの法則」注)を教えるとき、出発点としては、「磁場は電荷の移動でのみ生じる」ということだけを取り上げ、それからどのようなことが予測できるかを学生に考えてもらうようにしています。具体的には、

(1)磁場は電荷の移動(電流)でのみ生じる。

(2)ということは、電場が電荷によって生じるのとは異なり、N極とS極のような磁荷は単独で存在しない。実際、磁石のN極とS極は、いくら磁石を小さくしても分けることは出来ない。

(3)したがって、磁場を磁力線で表した場合、電場と異なり、湧き出しも浸み込みも無い。これから、磁場の発散は0であることが示せます。

(4)始まりの「湧き出し」も終わりの「浸み込み」も無いならば、磁力線の形はどうなるか?始まりも終わりも無い線の形は、ループしかない。

(5)それでは、1本の直線状の導線に電流を流すと、どのような磁力線が予測されるか?導線を中心とし、それと直交する円形のループ以外考えられない。直交しないで円が傾いていれば、対称性からおかしくなり、また楕円でもおかしい。円の中心に導線がないと、これまたおかしい。また、円形の磁力線は、同心円としていくらでも考えられ、磁場自体の大きさは、中心から離れるにしたがって小さくなっていくと予測できる。高校で暗記させられた右ねじの法則に関係付けて、磁場が右回りか、左回りかは重要でないと説明します。

(6)ということで、「円形の磁力線に沿って磁場を1回転足し合わせると、それがこの円を通過する電流である」ことを予測します。

(7)以上の予測を纏めると、いわゆる「アンペールの法則」が導かれます。今までの話は予測ですが、法則はちゃんと実験的に導かれ、矛盾が無いことが分かっていることを最後に説明します。ここで大事なことは、出発点として、「磁場は電荷の移動でのみ生じる」ということだけで法則を導き出したことで、電荷の移動が磁場の本質であることを学生に理解してもらうことも可能になります。もちろん、以上の考察は厳密ではないので、専門の先生には異論もあるかと思いますが、学生を考えさせる教材としては十分です。

 

以上のように、考えさせることを中心に授業を進めたいと思っておりますが、なかなか十分な時間が取れないのも事実で、今後さらに授業方法の研鑽を積んで行きたいと考えています。

 

注)アンペールの法則: と表せる。

 

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