26年度 優秀教員のことば

「日頃の教育に対する工夫、及び今後の教育への抱負」     — 建築建設工学科 小林 泰三

福井大学に着任して丸4年が経とうとしています。2年目に優秀教員賞を頂き、その翌年は選出されず、今年また選出して頂きました。「学生は良く見ているな」というのが率直な感想です。それは、「私を選ぶ学生の目がいい」ということでは決してなくて、私の意気込み度合いを見抜くかのような学生の鋭い感度に驚いている次第です。

着任当初は準備にも時間をかけ、講義もフルパワーで行っておりましたので、着任2年目の受賞は「熱血賞」を頂いたのだと思います。3年目は、学外の大仕事を仰せつかったこともあり、教育・研究の両立にかなり苦戦した1年でもありました。講義は、惰性に任せた「誤魔化し」が多かったことを認めなければなりません。それなりに誤魔化したつもりでおりましたが、学生からの評価は低調で、ショックを受けたのを覚えています。「これではいかん」と思い、今年4年目からは、気合いを入れ直すとともに、以下に示すように授業方針を少し変えることにしました。それが今回の受賞に少しは繋がったのではないかと私なりに分析しています。

私が主に担当している講義は「地盤工学」と「建設施工法」で、現場に出るまでに知っておいて欲しいことも多く、これまでは、いつも時間いっぱい詰め込み式の講義を行っておりました。試験をすると、高得点を取る学生も多く、それなりの手ごたえを感じていたのですが、いざ研究室に入って卒業研究を進めるとなると、これまでに学んだことが応用できない学生が多いことに気づきました。それまで、大学生が修得すべき「学力」とは、社会人としての教養と職業人となるための専門知識のことであると信じていたわけですが、専門知識とそれを応用する力は別物であるということが良く分かりました。知識を応用するためには、まず知識を体系化・構造化する力(私はこれを「学ぶ力」と呼ぶことにしました)を身につけることが必要ですが、これまでは知識の押し付けばかりで「学ぶ力」育成の観点が抜け落ちていたことに気づきました。とはいうものの、「学ぶ力」の育成方法など良く分からず、まずは学生に「なるほど」と思ってもらえる場面を増やすことだけを目標に、今年は以下のようなことを行ってみました。

1)犠牲を覚悟の上、コンテンツを必要最低限に絞る。

2)簡単な模型実験装置を作成して、講義時にデモンストレーションを行う。

3)演習にかなりの時間を費やす。

特に2)と3)は、多くの先生方が既に実践されていることで、目新しいことではないと思います。また、結果的にはデモや演習は準備不足のものが多く、お世辞にも自慢できるような講義ではありませんでした。今回の受賞は、私の「意気込み」のみを評価した、学生からの「努力奨励賞」だったのかもしれません。

講義の価値は、学生の人気投票結果と必ずしもイコールではないと思いますし、私のとった方法が正解なのかどうかは分かりません。また、「学ぶ力」とは本来は学生が自ら獲得していくもので、これだけでそれが十分に育つとは思っていません。ただ、「学ぶ力」をつけてもらうためには、まずは“理解できたのか理解できていないのかを判断する力”つまり、“理解したことを俯瞰し、再整理できる脳内回路”を強化してやることが重要であるような気がしております。その思いで、半ば強制的にでも少しでも多くの「なるほど」を実感してもらうような授業を展開してみようと思った次第です。

私の思いが暴走して学生が犠牲者になってはいけませんが、いつか「努力奨励賞」が本当の教育賞になることを願って、次年度も「学ぶ力」強化を目指した授業改善に取り組んでいきたいと思います。

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