27年度 優秀教員のことば

日頃の教育に対する工夫、及び今後の教育への抱負       — 電気・電子工学科 葛原 正明

20数年間の企業研究所勤務を経て、福井大学に赴任して12年になる。いまだに企業時代に舞い戻った夜の夢をまれに見るが、企業と大学の間のミッションの違いに戸惑う場面は少なからずある。そんな中で、大学教員であることを自覚させてくれる現実の証が講義であり、学生諸君が優秀教員に選んでくれたことに満足と感謝を感じている。

半導体工学、電子デバイス、電磁波工学という講義を数年来担当している。パワーエレクトロニクスや情報通信を支える基礎理論と将来展望を学生諸君に伝えることが務めと考えている。いずれの講義科目についても、外せない予備知識や重要公式が含まれており、講義時間内で式の導出と理解のツボを全て説明できないものかと毎年頭を悩ませている。板書だけでは時間が不足するため、説明内容をプリント配布する方法も併用している。しかし、生きた言葉で説明しなければ意味がないとの思いも強く、授業で取り上げるべき課題の選択と講義方法には毎年少しずつ変化をもたせている。「より良い講義」とは何かという課題は、結論のない課題として筆者の頭に常に存在し続けている。

昨今、学生が主体的に問題を発見し解を見出すことを主眼とする能動的学習(アクティブラーニング)の実質化が議論されている。確かに、話し手の自己満足に終始した授業は排除されるべきであるが、筆者はこの動きが講義形式の大切さを否定するものとなってはならないと考えている。その目的は学生の思考を促し前向きにすることである。聴き手が講義で得た知識をもとに、より深く意味を考え、さらにはその先の展開を自ら考える契機を与えることができれば能動的学習として及第のはずである。筆者は、特に難解な知識を伝える場面で、その歴史的背景を聴き手に伝えることの有効性を感じている。歴史を身近に学ぶことにより、その将来展望を自ら描く能力が醸成されるからである。携帯電話、パワーエレクトロニクス、ハイブリッド自動車などの分野は、その発展過程においてわが国が大きな貢献を果たしてきた。にもかかわらず、いまの学生諸君は携帯電話に棒状アンテナが付属していた事実すら知らない世代になっている。先端技術の進展の歴史-かつて国産技術がどのように世界標準となる技術に育ったか、または成功することなく消えて行ったか-を正しく知ることにより、聴き手の学習意欲が正しい方向に喚起され、ひいては若い世代から新たな将来技術が生まれることになるものと信じている。

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