28年度 The teacher of the yearのことば

日頃の教育に対する工夫、及び今後の教育への抱負      — 建築建設工学科 石川 浩一郎

福井大学に着任してから20年目になります。構造力学や建築耐震工学などの授業を担当しています。この20年間は日々の講義やゼミ、講習会などの資料作成や小テスト、演習などの準備で精一杯でした。授業では、具体的な例題を通して問題の解法の手順を明快に説明するようにしています。このときにローテクですが、赤、青、緑、黄色のチョークで色分けしてめりはりをつけながら板書して、大事なところはなるべくゆっくりと話すようにしています。100円ショップで買った直方体の食器洗い用スポンジと接着剤で作成した長方形断面をもつ棒状の部材模型を授業で使っています。これを使って曲げモーメントが作用した時の変形状態を視覚的に把握できるように説明しています。平面保持の仮定や曲げ変形にともなう断面に作用する引張や圧縮応力なども理解できます。この実演によるスポンジ模型の変形性状に基づき計算式の意味を何回も同じことを繰り返し説明しています。また、研究室の大学院生のTAが演習のときに自ら学生に声をかけて積極的にわからないところを丁寧に聴きだし教えています。後輩にわかってもらえることの喜びを感じ取っているように見えます。

演習のときには、TAとともにどのようなことがわからないのか予測する。質問に対してわかりやすい資料や説明を準備する。小テストや演習問題で確認する。授業の説明や例題等を修正する。そして、わかりにくいところが残っていれば反省して次の授業や演習等を改善することを心掛けています。

最近、AI(人工知能)がいろいろな分野で活用されるように開発が進んでいます。これまでの人の仕事がなくなってくることが懸念されています。AIの弱点として「意味の理解」を苦手にしていると、国立情報学研究所の新井紀子さんが述べられています。これまで私自身が授業等の体験を通して習得したことがつながってきて、頭の中でゆっくりと意味の理解や意味づけが熟成しているものと考えています。このような経験や知識などをデータベースやマニュアル、録画などで表現することは難しいのかなと思います。このことがAIに取って代わられたら、我々の大事な教育現場を失ってしまうのかなと心配してしまいます。 今後は、問いや筋道を立てて自ら考えて理解し、明快に伝える力を養うことを目的として、失敗を繰り返しながら達成する体験型の授業や実習等ができればと考えています。

最後に、遠藤周作さんは次のように述べています。楽しいばかりの仕事はいやだけど、楽しいことも案外すぐに飽きる。作家は苦しいが、たまに楽しさに出会える、苦楽しい(くるたのしい)仕事だ。私がTAの学生と「苦楽しそうに」授業や演習をしていたように学生が感じ取っていたのかなと勝手に推測しています。

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