28年度 優秀教員のことば

日頃の教育に対する工夫、及び今後の教育への抱負       — 電気・電子工学科 葛原 正明

電気・電子工学科で電磁波工学、電子デバイスという専門科目を10数年に亘って担当している。担当した当初は、携帯電話方式の違い、端末開発の歴史、携帯アンテナの正しい使い方などのからくりを講義の導入部で話すと、それまで後ろを向いておしゃべりしていた学生でも、こちらに熱い視線を向けてくれたものである。しかしこの10年で、携帯電話から棒状アンテナがなくなり、家庭の屋根から地上波アナログアンテナが消えた。システム環境の変化に対応して、学生諸君の受講態度にも変化が現れた。パソコンや携帯電話は、かつての贅沢品から必需品に変わった。その昔であれば、CPU、HDD、メモリなどの部品を自らの趣味で組み合わせた専用パソコンを自作しその性能を競うことができた。筆者が若かった頃の時代まで遡れば、オーディオアンプやスピーカを部品レベルから自作し、その性能に自己満足を覚えたものである。しかし昨今では、一部の熱狂マニアを除けば、情報通信機器を改造する余地などなくなってしまった。電気部品の機能が複雑かつ大規模化した結果、素人工作のレベルでは、歯が立たなくなったのである。このため、パソコンや情報端末を選ぶ比較基準が、性能ではなくデザインやブランドなどの要素に移行してしまった。物理系や電気系を専攻する学生ですら、パソコンや携帯電話の動作原理に興味を示せなくなりつつある事実を教員として認めざるを得なくなっているのである。

では、われわれ教員は専門科目の講義を行う上で何に留意すべきであろうか。アクティブラーニングの観点から筆者の考えを述べてみたい。アクティブラーニングでは、対話性と主体性を重視した講義が求められる。前者の対話性を促進する方法としては、演習形式やミニレポートの併用など、場面に合った方法で既に実施が進んでいるものと思われる。一方、後者の目的は学生の思考を前向きにすることである。学生が講義から何らかの刺激を受けて、自らの意志で先の展開を創造するようになれば、主体性が喚起されたと言ってよいはずである。では、学生の主体性を引き出す特効薬は何であろうか。筆者はやはり生きた人間が生の声で発する熱意と臨場感にあると考える。音楽ファンがライブ演奏に参加するのと同じ理屈である。筆者が学生だった1970年代頃の先生方は、実にのびのびと自分の信じる言葉で学生に語り掛けておられたように感じたものである。われわれ教員が講義内容の不思議さや面白さを自らの言葉で学生に伝え、学生がその真髄をわくわくしながら実感できる講義ができれば、ひいては若い世代から新たな独創技術が生まれることになるものと信じている。

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