2023年12月、私たちの福井大学工学部は創立100周年を迎えます。福井大学工学部は、1923年創立の福井高等工業学校を祖とし、1949年に新制大学の工学部(3学科)として設立されました。その後大学院も設置され、ほぼ全ての工学分野を網羅するようになりました。現在、工学部と大学院の工学研究科には約3,000名の学生が在籍しており、工学部は本州の日本海側にある国立大学のなかでは最大級の規模を誇ってます。
このように成長を遂げた工学部が100周年を迎えるにあたり、様々な記念事業を計画しています。この機会に現役の学生と教職員と卒業生の皆様が福井大学工学部という共通のコミュニティに所属しているという意識を高める取り組みをしたいと思います。特にコロナ禍の影響を受けた学生にとって、このようなコミュニティ意識の涵養は大切だと考えます。現役学生の皆様と福井大学工業会の皆様には、100周年記念事業に積極的にご参画いただくとともに、工学部のコミュニティ意識の涵養のために工学部は何をすべきかを是非ご提案いただきたくお願いします。
さて、工学部と工学研究科は、グローバルな視点で夢を描きそれを形にする技術者と定義するグローバル・イマジニア(Global Imagineer)を育成しています。2005年に設置された先端科学技術育成センターは、学生をイマジニアに育てるために学際実験実習や創成活動などの創成教育を支援してきました。2011年に設置された語学センターは学生がグローバルな視点を身に着けられるように英語の共通教育科目を提供し、国際センターは留学生の受け入れと日本人学生の海外派遣を支援しています。工学部の教員は専門分野における英語授業を提供するとともに、専門分野の研究を基に学生の皆様にも国際交流の機会を提供しています。2021年にはデータ科学・AI教育研究センターが設けられ、工学系の全ての専門分野でデータサイエンスとAIを扱える人材を育成していきます。
また、工学部と工学研究科は、工学系の広い分野で卓越した研究成果を生み出しています。中でも繊維・マテリアル研究センターは、繊維と機能性材料に関する国際レベルの研究成果を上げることで地域の基盤産業の促進に寄与しています。地域の電力と経済を支える原子力を研究する附属国際原子力工学研究所は、将来の安全なエネルギーの生成、原子力防災に関する研究を地域と連携して推進しています。世界最高水準のジャイロトロンを有する遠赤外領域開発研究センターは、パルステラヘルツ波技術と分光技術の融合など先進的遠赤外領域の研究を推進しています。文部科学省からの支援(概算要求)により2023年4月に開設されたカーボンニュートラル推進本部は、北陸地域の天候気候を積極活用する再生可能エネルギーの生成技術の開発、再エネ・畜エネ・省エネ技術に関する研究の強化を開始しました。温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。さらに、上述した種々の研究を促進するためにプロジェクト研究センターを組織し、学会大会と国際会議への参加や国際学術誌への論文投稿などの研究活動を支援しています。
周知のように福井大学は教育研究の成果を、地域連携プラットフォームを介して地域に還元しており、その地域貢献の実績は福井県内外から高く評価されています。工学部と工学研究科では、度々報道されてきた「プロジェクト型教育」を通して、学生が地域の企業と自治体の課題を調査分析することにより地域に貢献しています。さらに、2022年4月に敦賀キャンパスに設置された嶺南地域共創センターは、工学部と工学研究科の嶺南地方への地域貢献を強化します。
福井は海と山に囲まれた自然豊かな地です。福井大学工学部の前身である福井高等工業学校の初代校長の關 盛治氏は「教育は熱なり、愛なり、感化なり」の信念をもとに教職員と学生とが家族同様の関係を築く校風を作ったそうです。この校風は永く引き継がれ、現在の工学部と工学研究科においても学生と教職員との間に近い距離を保っています。教職員は学生の皆様と将来の夢を実現したいという熱き思いを共有し、皆様がグローバル・イマジニアに成長できるように支援していきます。