機械・システム工学科

原子力安全工学講座(工学部)

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原子力安全工学講座(工学部)

現在稼働している原子力発電プラントには、運転開始後40年を経過するものが現れてきており、更なる継続運転も視野に入れて、プラントの安全性を担保する必要があります。プラント安全工学分野では、原子力発電プラント構造物の運転期間中の安全機能維持確保、そして適切な時期に補修を行うための基盤技術づくりを目的に、構造健全性評価、終局強度評価、高経年化対策技術、放射線と高温水の複合環境作用、耐放射線材料、熱流動、安全解析、き裂発生・進展シミュレーション技術、材料欠陥評価、余寿命評価、マルチフィジックス解析など、様々な課題に関して、多面的な教育・研究を行います。

研究紹介

■減肉配管の強度・健全性評価

 高経年化プラントにおいては、材料劣化や腐食による構造強度の低下が問題となるが、そのような問題を解決し、安全かつ効率的にプラントを維持するには、構造健全性評価技術が重要である。プラントでは多くの配管系が使われており、高経年化プラントでは、高温高圧の内部流体により、配管が減肉することがある。予測される減肉量に対して、どこまで必要な強度を維持できるのか、実験とシミュレーションにより破壊メカニズムを解明することにより、減肉配管の強度評価法に関する研究を行っている。
■シミュレーションによる欠陥評価

 疲労設計には欠陥評価が欠かせない。しかし,材料欠陥にも、様々な欠陥があり、それらを理論的に全て考慮することは難しい。そこで、X線CT画像や連続研磨写真から、欠陥の正確な3次元画像を得ることにより、3次元画像データから正確な数値解析モデルを作成する。そして有限要素解析により、欠陥まわりの正確な応力場を評価することにより、疲労強度への欠陥の影響を定量的に調べている。また、マルチスケール解析手法を用いて、均質化法を利用した欠陥群まわり材料特性評価なども行っている。
■応力腐食割れシミュレーション

 原子力発電プラントでは応力腐食割れの発生が問題となっており、これによるトラブルを未然に防止するためには、き裂の発生と進展を予測することが重要となる。この研究では、ミクロレベルの変形や力の状態をモデル化した計算機シミュレーションによって、き裂が発生・進展する過程を模擬することを試みている。実験では数十マイクロメートルの微小なき裂が多数発生する様子が観察されたが、シミュレーションではこの様子が再現されている。
■き裂の進展・合体予測

 現在の規格では、原子力発電プラントにおいてき裂が発見されても必ずしも補修する必要はない。補修しない場合、発見されたき裂が将来どのように進展するかを予測し、強度が十分であることを確認する必要がある。実際のき裂は密集して発生することが多いことから、進展予測にはき裂同士の干渉の影響を考慮することが重要となる。この研究では、複数のき裂が接近した場合の進展速度や形状の変化を予測する手法の開発を行っている。
■レーザー同位体分離

 同位体濃度を制御する技術は、新しい性質、機能をもつ材料の開発につながることから、様々な分野で望まれている。特に、原子力分野においては、ウラン燃料製造、高耐力原子炉材料開発、高燃焼度を可能にする可燃性毒物の開発、放射性廃棄物処理技術に関係する重要な技術である。この研究では、真空中で発生させた様々な原子ビームに、自由に波長を変えられるレーザー光を照射し、原子のエネルギー状態や運動量がどのように変化をするかを実験によって、あるいは計算機を用いた数値シミュレーションで調べることにより、レーザー光による同位体分離技術の開発を目指している。
■放射線・粒子線物理

 原子力関連の放射線計測器開発および応用技術の分野に対して、物理学的なアプローチで研究を行っている。特に、原子力領域のテーマとしては、ガンマ線源の位置やエネルギーを同定するためのコンプトンガンマスコープの開発や高速炉における未臨界炉雑音解析の試みが放射線計測の新しい領域として興味深い。また、より物理学的なものでは、ダブルベータ崩壊実験等があり、教員と学生が協力し積極的に取り組んでいる。
■核医学診断装置用イメージング薬剤合成システム開発と画像処理

 核医学診断装置PETで使用されるイメージング薬剤の半減期は非常に短いため、サイクロトロンによる陽電子放出核種の製造から薬剤合成までを施設内で行う必要がある。新規のイメージング薬剤を研究用に合成するには、短時間・遠隔操作・高再現性などが要求され、また薬剤により合成方法が異なるため、容易にプログラム可能な薬剤合成システムの開発を行っている。また、合成した新規イメージング薬剤の動物モデルを用いた動態評価、PETで得られる画像データの解析法や表示法に関する研究も行っている。
■加速器応用技術の研究

 加速器とは、電子や陽子やイオンなどの「荷電粒子」を高速に加速する装置であり、そこで使われている技術は、先端の科学技術の粋を集めた極限技術である。加速器は原子核・素粒子の研究のための実験装置として発展して来たが、原子力応用、癌治療・診断や、中性子や放射光を用いた物性研究などにも広く応用されている。原子炉駆動用のFFAG(固定磁場強収束)加速器や大強度陽子シンクロトロンなどの開発研究を行っている。
■極限環境における水素マネジメント技術の開発

 高強度レーザー光を集光・照射することにより、どんな物質をも瞬時に加熱し、微小プラズマを生成することができる。このプラズマからの発光を分析することにより、非接触でリアルタイムな微量・成分分析が可能となる。軽水炉材料の放射線水環境下における材料の水素脆化問題に関連して、水素の迅速定量分析技術への応用等を,附属国際原子力工学研究所と共同で開発している。
■原子力防災

 原子力防災を中心とした地域の安全・安心の確保を目指した訓練のあり方、地域防災力向上のためのシステム・マネジメントの確立のための調査研究を行っている。
 
■環境放射線モニタリング

 放射線や放射能の測定・監視に有用な技術開発、また放射性同位体の検出技術の向上をめざした実験や応用に関する研究を行っている。
 
■地域における原子力との共生

 地域とともに共存共生する原子力環境のあり方、また地域住民と原子力事業者との信頼関係の構築に向けた調査研究を行っている。
 
■信頼性と安全性を確保する情報システムの高度化

 簡易な通信技術(イーサフォン)を用いた音声伝送、また計算機利用者の挙動に基づく認証技術の開発を行っている。

 

■ネットワークセキュリティの向上

 ネットワークトラフィックの常時監視に基づく、セキュリティの向上と、管理運用の容易化を実現するDTIハブ技術の開発を行っている。

 

 

■境界要素法を用いた地震シミュレータの開発

 地表における地震動の予測を詳細化することを目的として、地震シミュレータの開発を行っている。現在の強震動予測手法と併用して、さまざまな施設の入力地震動の特性を明らかにしていく。
 

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